ハードディスクに録画された、『それいけ! アンパンマン』を観た。
といっても、次男が観ているのを、横で見ただけだが
まだ2歳にならない子どもをとりこにするのは、大したものだ。
以前は、まったく観たことがなかったのだが
この半年くらいで、何度か次男と観ているうちに
アンパンマンの世界、というものが、わかるようになってきた。
アンパンマンのエピソードは、基本的には
1)バイキンマン(悪者)がまず悪いことをする
2)アンパンマン(主人公)が現れて応戦する
3)しかしパン部分である「顔」を濡らされて、力がなくなってしまう
4)誰かがジャムおじさんのところへ、ピンチを伝えに行く
5)ジャムおじさんが代わりのパン(アンパンマンの頭部分)を焼いて届ける
6)アンパンマンの濡れた顔と、新しく焼いた顔をチェンジ、元気100倍!
7)元気を取り戻したアンパンマンが、バイキンマンを倒す
という展開である。
もちろん、その前後に背景となる、いろいろなエピソードがあるんだけれども。
それは、水戸黄門や、ウルトラマンと同じ。
いろいろ構造的に面白いのは
まず、アンパンマンは、バイキンマンを殺したり、捕らえたりたりしないということだ。
アンパンマンは、バイキンマンという悪者がいて、自分の存在価値が成立する。
普通、どんなヒーローものも、いろんな敵が次から次へとやってくるが
この世界では、基本的に、そこまでの悪者はバイキンマンしかいないため
彼がいなくなっては、アンパンマンの存在価値がかなり薄れてしまう。
消防車は、火事を消すんだけども、火事がなくては、消防車の必要性がない。
とはいえ、元凶であるバイキンマンがいなくなれば、世界は平和に保たれるわけだから
誰かが、その矛盾をアンパンマンに言ったりしないのだろうか。
死刑廃止論がベースになっているのだろうか。
いや、バイキンマンもかなり悪いことをしているとはいえ
誰かを殺したりしているわけではないから、そこまではできないということか。
でも、殺さなくても、ずっと閉じこめているだけでもよいのに。
で、結果、現実社会同様、バイキンマンは再犯を繰り返す。
しかし、バイキンマンもアンパンマンを殺さない。
いつも、なにかの手段で、アンパンマンの顔を濡らして、弱らせたらそれでお終い。
攻撃するときは、巨大なロボの足でアンパンマンを潰そうとしたりしていて
かろうじてアンパンマンが逃げて助かっているだけだから、殺す意図がないとは思えないが。
そして、なにより、ジャムおじさんの存在を、バイキンマンはどう思っているのだろう。
アンパンマンは顔(以下「アンパンヘッド」)が濡れると動けなくなってしまうが
新しいアンパンヘッドに替えると、元気100倍! と戻ってしまう。
ところで、100倍ということは、濡れて動けないほうが基本なのだろうか。まあいいか。
その、アンパンヘッドを製造しているのは、そう、ジャムおじさん、である。
アンパンマンは、言わば武器だ。バイキンマンに対抗するための兵器。
その兵器自体を作っているのが、ジャムおじさんだ。
だから、ジャムおじさんをまず、捉えるなりすれば、よいわけだ。
戦争でも、1つ1つの武器を壊すより、武器製造工場を破壊する。
ジャムおじさんという武器商人、唯一の兵器製造者をなんとかすればよいわけだ。
バイキンマンは、その存在、その構造を、どう思っているのだろうか。
そもそも、アンパンマンというのはショッキングだ。
アンパンヘッドが、バイキンマンの攻撃で濡らされて、動けなくなっても
ジャムおじさんが焼いた、新しいアンパンヘッドに替えれば元気が戻る。
この設計は、ずいぶんショッキングである。
頭ごと、新しいものに入れ替えてしまうからだ。
その、あっさり感がすごい。
ウルトラマンなどの、ヒーローもので
敵の怪獣に襲われ、攻撃されて、身体がボロボロになって動けなくなったところで
新しい身体が飛んできて、入れ替わって、はい元気!
みたいなものは存在しない。
そりゃねぇよ、と思ってしまうからだ。
しかし、アンパンマンでは、それを、あっさりとやってしまっている。
しかも、それがアンパンヘッド=「頭部分」だからすごい。
僕ら人間は、いや、人間でなくたって
脳は、頭に存在する。
だから、考えるのも、記憶があるのも、すべて頭部分にある。
例えば、僕が頭に大きな損傷を受けたとして
実際にはできないけれど、代わりに小林さんの頭を取り付けたとする。
あり得ない話だけど、それで「元気100倍!」とか、元気になったとしても
それは、僕ではない。小林さんだ。
周りが「ワーワー!」とか回復を喜んだとしても
勘違いするなと言いたい。それは、小林さんだ。
しかし、アンパンマンでは、頭が替わっても、それがアンパンマンとされている。
新しいアンパンヘッドが飛んできて、古いアンパンヘッドを横にすっ飛ばして
(ちなみに、いつもここで、僕は爆笑してしまう)
くるくるくるっと回転して、元通り!
「元気100倍! アンパンマン!」
......おい、違うだろ、違うだろ、といつも思う。
ところで、いつも、どこかに飛んでいった、濡れたままのアンパンヘッドが気になってしまう。
きっと、どこか地面に落ちたままなのだろうけれど
濡れたアンパンマンの顔、そのまま、というのは、グロテスクだ。
虫が食べたり、微生物に分解されたりして、土に還っていくのだろう。
「アンパンマン」という、その本体は、身体なのだろう。
毎度、頭が入れ替わっても、アンパンマンは、以前のアンパンマンのままだ。
或いは、毎度、記憶を喪失していのだろうか。
ベーシックな部分だけ、新しい頭に練り込んで焼いて。
アンパンマンは、非連続な存在なのだろうか。
それとも、そんな感情みたいな、心みたいなものは存在しないのだろうか。
やはり、ジャムおじさんが作る、単なる兵器なのだろうか。
そう思うと、この話は、タイトルが「ステルス戦闘機」みたいなもので
バイキンマンと、ジャムおじさんの戦いなのだろうか。
バイキンマンが、その影の存在、相手の本体に気付くまでの話なのだろうか。
......なんて、思って観ていると、事件は起きた!!
アンパンマン with ジャムおじさんまで捕らわれてしまったのだ!
「アンパンマンとホワイトクリーム姫」という話。
ホワイトクリーム姫の住む、空飛ぶパイの城に招待された
アンパンマン with ジャムおじさん(と、メロンパンナとか犬とか、ほかの方々)。
しかし、そこには、バイキンマンが......。
空飛ぶパイの城に、監禁された、アンパンマンと、ジャムおじさん(とほかの方々)。
兵器と、その製造者が、共に捕らわれてしまう。
空飛ぶパイの城に捕らわれ、身動きができない状態。
その間に、バイキンマンは、悪の限りを尽くす。
これは、いったいどうなるのだ!!
仮に、なんとか、ジャムおじさんが動けるようになったとしても
そこに、兵器......じゃないや、パンを製造するマシンはない。
「構造的な、終演じゃないか!」と、息子より興奮してしまう。
まるで、推理小説のように思えてくる。
どうやったら、この先の展開で、アンパンマンは新しい
アンパンヘッドを手に入れ、元気を取り戻すのだろうか。
それとも、アンパンマン抜きで、みんなで、なんとかするのだろうか。
いや、それができてしまったら、それはそれで、アンパンマンの終了だ。
彼の存在価値がなくなってしまう。
まてよ......と思う。
どこかにヒントがあるはずだ。伏線が存在するはずだ。
見ると、一緒に捉えられているパン一族がいる。
メロンパンナちゃん!
そうか、わかったぞ、メロンパンナちゃんの頭をちぎって
アンパンマンの首にくっつければ、「メロンパーン・・・アンパンマーン!」
・・・いやいや、それはないな。
いくらなんでも、残酷だ。
いや、そんな残酷なことを、いつもやっているではないか、この世界は。
僕らが残酷と思うだけで、この世界では違うのだ。
メロンパンも、後で焼けばよいわけだ。
っていうか、「焼けばよい」って、なんだこの世界の倫理観は。
・・・ん〜、どうなる? どうなる? と
いくら考えてもわからない・・・・
と、あまりにも衝撃的な、展開が起きて、物語は展開、解決された!!
長くなったし、この衝撃の解決編を含む、アンパンマン考の続きは
今週末に迫った、トークライブ『気になること。3』でやろうと思う。
とはいえ、トークライブは、今回、いままでで最も早く
発売から1週間くらいでソールドアウトとなってしまっているので
解決編が、気になる人は、Googleなどで
「アンパンマンとホワイトクリーム姫」を検索していただきたい。
この解決編を知らなくて、トークライブに来る、という人は
ぜひ、「知らない状態のまま」、来ていただきたい。
(ヨシナガさんも知らないまま、来てねー)
あまりの衝撃的な展開で、「ええーーーー!!!??」と声が出た。
アンパンマンのアイデンティティとはなんなのか。