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November 17, 2010


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僕はいま、なにをやっているか。

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「いま、なにをやってるんですか?」とよく言われる。


馬鹿にしながら観にいって、いつの間にか映画館で涙を流していた
『いま、会いにゆきます』という映画のことを、久しぶりに思い出したが
「いま、なにをやってるんですか?」と訊かれることがある。


「いま、こんな仕事やってるんですよー」と、どこかで発表することもないし
このブログでも、過去なんどかはあったと思うけど、滅多にないし
雑誌のインタビューとかラジオの出演だったり、そういうときに訊かれたら
答えてはいると思うんだけど、広く伝わるようなものでもないので
そう思われるのも当然だと思う。


そう思われるのには、ほかにも大きな理由があって
それはきっと、以前は、ゲームの開発と出版をしていたからでしょう。
ゲーム業界でバリバリやっていたのに、いまどうしているんだろう?
ということだと思う。

その頃は、「いま、こんな作品を作っているんです」とか
頻繁にメディアに登場していたのに、ゲーム業界から離れてからは
そういう機会も少なくなったからね。
ゲーム業界から離れて、ロックミュージシャンでもやっていれば
また、違ったんだろうけれども。


どんなことをやっているのか、というのは、あとで簡単に伝えようと思うけれど
そもそも、なんで、どんな仕事をやっているかあまり伝えていないのだろう
ということを、自分なりに考えてみたので、それをまず。


1つは、「機密」の仕事が多いんですよね。
というか、ほとんどの仕事がそう。
僕がやっている仕事の場合、「新規立ち上げ」のプロジェクトが多いので
ベラベラベラと言えない、というのが大きな理由。
そもそも、機密保持契約が結ばれている仕事も多いんです。

例えば、いま現在やっている仕事も、そのほとんどが
「すでにあるサービスを、よくするための仕事」ではなく、「新規立ち上げ」の仕事です。
ですから、ほとんど秘密なので、言えないんです。


もう1つは、これはうまく伝えるのが難しいんですけれど
多くの仕事が、「僕の『作品』じゃないからなあ」という気持ちが大きい。

例えば、ゲームだったりすると、基本的に、僕がプロデュースや企画をして
場合によっては、グラフィックデザインや、音楽なんかもやって
もちろん、僕1人でぜんぶ作ることはなく、2人〜数十人で制作するんだけど
それでも、なんていうんだろ、「こういう作品が作りたい」というのは
僕の考えや、気持ちが発端になっているわけで、作品を届ける側の責任として
或いは、広報的な活動として、その内容というより
「気持ち」や「思い」を伝えることが多かったりします。

だけど、いまやってる仕事の多くって、そういう『作品』の類とは違うんですよね。


例えば、ABCという会社が、どこかに新しい交通網を立ち上げるとして
僕がその、改札システムとか、コミュニケーションに関する仕事を請け負ったとして
(そういう仕事が多いわけです、実際に)
仮にそれが機密保持もなんもなくて、少なくともオープンしてからは公になるので
「べつに言っていいよ」というものだったとしても、なんというか
「あのプロジェクトのこの部分、僕が考えたんですよー」なんて
わざわざ偉そうに言うものでもないかなあと、そう思ってしまうことが多い。

それでも、制作発表会みたいなものがあって、登壇したりすれば別なんですけれど。
例えば、コカ・コーラ社の仕事などは、そういう機会が与えられたので
名前も出たし、僕なりの考えとか思いを伝えたりもしたわけです。


似たようなものでは、数年前に、温泉旅館を作ったプロジェクトがあって
それに関しては、コンセプト設計から携わっているので、ある種、作品的な部分もあるし
少なくとも、「企画マン」的な人物は、ほかに外部でいないわけだし
有り難いことに大ヒットして、いまでも予約が取れない旅館だったりするので
正直、いまは「凄いだろ」と自慢したい気持ちもあったりするんだけど
オープン当初に思ったのは、「旅館」というものに、個人が見えるのは気持ち悪いと考えた。

よく、誰々プロデュースのレストランとか、誰々プロデュースのホテルとか
そういうのもあったりするけれど、あれ、僕には気持ち悪いんですよね。
お前の顔なんて思い浮かべながらご飯食べたくないよ、って思ってしまう。
そういう要素がないと、ヒットしない、っていうのもあるんだろうけれど
そもそも、そんなんじゃ長続きしないよ、って思うんですよね。
なもんで、旅館側の人たちには、口止めをしたくらいです。
僕の名前は出さないでね、と。

旅館とかホテルの立ち上げ、というのは、非常に面白く、やり甲斐のある仕事で
自信もあるんで、これからも、ぜひやってみたいんだけど、ポートフォリオとして
こんな仕事をしました、というのがないと、当たり前だけど、さっぱり仕事の依頼もないので
このあたりの仕事に関しては、やっぱり言わせてもらおうかなあとか悩ましかったりもします。


話が長くなりましたが、そんな理由で
「いまやっている仕事」が、あまり伝わっていないんです。


営業的な要素が強い仕事であれば、また違うんでしょうけれど
僕の場合、「こんな仕事やってくれ」と依頼されて、関わらせていただくことが多く
ほとんど、新規営業活動的なこともしておらず
有り難いことに、評判を聞いた別のクライアントから仕事の依頼があったりとか
仕事の成果を評価してもらって、同じクライアントから依頼されることが多いのです。
例えば、最も最近スタートした仕事だと(今月から)、そのクライアントとは久しぶりで
もう6〜7年前に仕事をして以来で、久々に仕事をいただきました。有り難い。

営業する気がないとか、やる気がないとか、そういうことでもなくて
以前は、それでも、企画を持ち込んだりしていたんだけど、あまりにも打率が悪い。
ちょうど、たまたま、その相手の企業が、そういったサービスを立ち上げようとしているとか
或いは、僕の能力の役割を求めていればよいんだけど、そんな偶然はめったにない。
なので、企画を考えたり、営業に行ったりする、無駄打ちの時間を取るよりも
その時間を、いま携わってる仕事に費やして、よい成果を上げたほうが
次の仕事とか、よい仕事、面白い仕事に繋がる、と思っているんです。
ま、そんなこと言ってられるのも、いまのうちかもしれないけれど。


と、ここで終わってしまっては、このブログの主題にまったく応えられていないので
もうちょっとだけ具体的に書いて、終わりたいと思う。


いまやってる仕事の100%は、クライアント様ありきの仕事です。
どの仕事も、クライアントから依頼を受けてやっています。

来年、1つやりたいアイデアがあって、それに関してはクライアントも見あたらないし
自前でやったほうが良い気もするので、もしやるなら、かなり久しぶりに
自発的に、自前でやる仕事になるかもしれないんだけど、現在はすべてクライアント仕事。


仕事の内容は、その仕事の対象と、クライアント様の依頼でさっぱり異なります。

この数年の仕事で、多い順番で言うと

1.サービスの企画とかコンセプト設計
2.ブランド&マーケティング
3.コミュニケーション設計
4.インターフェイスデザイン
5.クリエイティブディレクションとかグラフィックデザイン
6.音楽関係

という感じだと思います。

べつに、マルチクリエイターとか、そういうものを目指しているわけでもないし
どちらかというと、あまりそういうふうに見られたくないんだけど
依頼された仕事によって決まるので、いろいろ挙がるようになります。

あとは、バランスを取る、というのを非常に大事にしていて
例えば、マーケティングの仕事、と限定してしまうと、正直、苦しくなるわけです。
面白くて効果が大きいマーケティングのアイデアなんて、考えて考えて
ずーっと考えてやっと出るので、同時に2つも3つもできない。
それに関しては、才能の問題もあるんだろうし、もっと組織的にするという
方法もあるんだろうけど。

あと、バランスという意味では、オンラインと、リアルのバランス。
人によっては意外に思うかもしれないけれど、いわゆる「IT」的なサービスの仕事は
半分くらいしかありません。いま現在もちょうど半分くらいです。
オンラインとかリアルとか、分けて考えるのは、ちょっと古いと思うんだけど
そういう意味だけではなく、例えば、オンラインの仕事の依頼だったとしても
オンラインの世界で解決するのではなく、リアルとうまくバランスを取って
解決するような仕事が多かったりします。

あと、グラフィックデザインとか、音楽系の仕事は、比較的少ないので
どうしても、依頼があると嬉しくなって受けちゃうんですよね。
認められることが比較的少ないことを認められると嬉しいんでしょうね。
どちらも、いい仕事していると思うんですが。。


と、こうやって書くと、ばらばらな仕事をしているように見えるかもしれませんが
それは、そういうジャンルで区分しているからなんです。
上の、5や6は、ちょっと違うかもしれないけれど、1〜4はすべて頭を使う仕事。
言ってみれば、どれも企画立案と設計の仕事であって、僕の中では
同じ回路、経路を使ってやっています。

「ヒットするには、うまくいくには、これが大事」というのが僕の中にあって
ほとんどすべて、同じような考え方で考えています。
これは、実際、僕と仕事をしてくださった方は、強く頷いてくれると思いますが
大事な「核」みたいなものを考えて、それに具体的な「枝葉」を付けていきます。

僕流のやり方なんでしょうけれど、僕流だから、僕が仕事をする意味があるわけです。


もう1つあるのは、すべて「消費者/生活者」を相手にしたものであるということ。

いわゆる「B to B」的な仕事は、やってません。
そういう仕事は、営業的とか組織的な要素が大きいというのもあるけれど
僕の場合は、「利用する人の立場に立って考える」というのが根本にあるので
「消費者/生活者」を相手にした仕事ばかりとなります。

それもなるべく、閉ざされた集団を相手にしたものより
なるべく幅広い層を対象にしたもの、わかりやすく言えば、老若男女誰でも
受けることができるサービスがメインです。
これは、得意不得意の話ですね。


というわけで、長くなりましたが、そろそろ。

少しでも、僕のやっている仕事が、伝わったなら嬉しく思います。
具体的ではないのが、申しわけないんですけれど。


マンガで『ザ・シェフ』というのがあるんですが、それと似ています。

主人公は雇われのシェフで、レストランから依頼を受けて
レストランを流行らせて、去っていく、というのが彼の仕事なんですけれど
クライアントと、ヒットという目的ありきの仕事なので、そんな感じ、がいまの僕の仕事。

90年代は、ゲーム業界にいて(いまもたまにゲームは作っているんですけど)
すべて自発的に、自前で、仕事をしていた自分が、この10年は、ガラっと変えて
職種だけではなく、仕事のスタイルも、やり方も、すべて変えて
それなりにうまくいっているので、とても有り難く思っています。

ものの見方にもよるんでしょうけど、経営的な意味では
ゲーム時代よりも、いまのほうがうまくいっています。


ちょうど、今年の年末で、ゲーム業界から離れて、新しい仕事をして10年になります。
「継続は力なり」とはよく言ったもので、最初の数年は、実績もなにもないので
仕事がまったくない時期もあり、ものすごく大変でしたが、経験も成果も
ある程度積むことができたおかげで、いろいろな仕事に携わることができるようになりました。

近年では、依頼される仕事が、どれも魅力的で面白い仕事ばかりで
また、僕の力が発揮できる仕事にフォーカスできることも多く、感謝しています。


これを読んでいるみなさんも、もし、必要な機会がありましたら
いつでも声をかけてください。


継続的に流行らせる「種」を作るのが、僕の仕事です。


Posted by eno at November 17, 2010 12:44 AM


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