家に帰ると、下の息子が、「構え。構え」と言う。
実際には、「うーうー」とか「あーあー」だが。
「ミニカーで一緒に遊ぼう!」と言う。
実際には、「フォッ、フォッ」とか「フーフー」だが。
息子は、いつもソファで、ミニカーで遊んでいる。
最近、パトカーと、救急車と、バスが、特別な存在のようだ。
道で出会うと、「ンーンー!」と、興奮する。
パトカーと、救急車と、バス、それ以外の車、といった区分けのようだ。
その3種類だけ、見つけると、「ンー!」と興奮する。
先日、カミさんが、厚紙を手に、「パトカーを描いてやってくれ」と言った。
ご丁寧に、赤と黒のマジックも手渡された。
そんなのお安いご用……。
……しかし、気付く。
相手が成長した子どもであれば、パトカー的なものを書けば
ある種の記号的表現でも、それが、パトカーであると理解してくれる。
しかし、まだ1歳半に満たない、この子は
そういう記号では、わかってくれないだろう。
白い車+下半身が黒+上に赤いランプ=パトカーですね、というわけにはいかない。
丁寧に書かないと。
というか、上手に書かないと……。
気合いが入る……。
手書きの画力が、求められるなんて、いつぶりのことだろう。
これで、書いてみせて、無反応だったら、だいぶショックだ。
ヘッドライトを描いたくらいで手が止まる。
難しいと思うと、よけいに難しくなる。
車体が必要以上に流線型になり、タイヤの立体感が崩れる。
ていうか、なんで、ナナメ前なんていう角度から、描き始めちゃったんだろ、と反省する。
描き終える。
息子は、まだソファで、ミニカーで遊んでいる。
「よお!」と、息子を呼んだ。
息子は、「?」と振り向く。
絵をパッと見せ、「ブブーン!」と言う。
「ブブーン」と口で言って、絵を横に動かしたのは、反則かもしれない。
モノマネで「福山雅治です…」と言っちゃうようなものだ。
「?」と、一瞬時間が止まった。
「ブブブーン!」と、さらに絵を動かす。
すると
「ンー! ンー!」
と、興奮してくれた。
やった!!
「ブブブーン!」と続ける。
「ンーンー!」と、指を指して興奮している。
「ブブー!」
「ンー!」
「ブンブゥゥーー!」
「ン! ンー!」
「ブン、ブブブーー!」
「ンー! ンー!」
コミュケーションの成立。
調子に乗って、その後、救急車も描いた。