また、オフィスの周りが工事ばかりだ。
水道工事、道路工事、建設工事。
上の階までリフォームを始めた。
僕は工事現場のマシーンが好きだ。
工事関連の重機が好きだ。
時間があれば、人間とマシーンの共同作業を見てしまう。
僕が重機が好きなのは、そのメカニズムとかルックスではない。
人間と一緒に働いているロボットのように思えるからだ。ペットというか。
よく、子どもの頃に、「大昔の暮らし」みたいな絵で
マンモスに乗って人間が移動していたり
大きな動物に食べ物なんかを積んで、運んだりしている絵を見た。
或いは、「未来の暮らし」みたいなもので
ロボットが、テーブルにコーヒーカップを運んでいたり
する絵があるが、そんな感じ。
なんというか、生きている感じに思えるのだ。
人間の友、というか、一緒に働いている感じ。
少し、遠目で見ると、より、そう思える。
工事の作業をしながら、会話しているように見える。聞こえる。
班長「そこあと仕上げ終わったら、一旦休みにするぞ」
重機「モトさん、1時間前もそんなこと言ってましたよ」
班長「ところで、お前、年末は仕事出れるのか?」
重機「いや、今年は、久しぶりに実家に帰ろうと思ってまして」
班長「お前、実家、どこだっけ?」
重機「苫小牧なんですよ」
班長「じゃ、冬は雪で大変だな」
重機「えぇ、親父もいい歳なんで、いろいろ手伝いに……」
班長「実家には、兄弟とかいないのか?」
重機「弟と妹がいます」
班長「仕事は、なにやってるんだ?」
重機「弟は稲刈機をやっていて、妹は券売機です」
班長「券売機の妹は、結婚はしてないのか?」
重機「いちどフォークリフトと結婚したんですが……去年、離婚しまして」
班長「フォークリフトの野郎はどいつも浮気性だからなぁ」
重機「まさにそれなんです、理由が」
班長「そりゃ仕方な……おぉい! そこちょっと手前まで掘りすぎだぞ!」
重機「モトさん、そろそろ休憩にしません?」
班長「なに言ってんだよ、まだ早ぇよ!」
重機「ガリガリガリ……」
班長「だから、そこ掘るなって!」
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