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January 28, 2008


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王手

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息子が、将棋をしようと言ってきた。
ほほう、それは嬉しい誘いだ、と、受けて立つ。

1年ぶりくらいだろうか?
どのくらい上手くなったのかと楽しみに始める。


しかし……。

あっという間に、終わり。
あっという間に、僕が勝ってしまう。


息子が再戦を申し出る。


そして、第二戦目。

しかし……。

また、あっという間に、終わりそうだ。
また、あっという間に、僕が勝ってしまいそう。

このまま、進めていけば、あと五手以内に勝つだろう。


あれ?
なんだこれ?

こいつは、この1年なにをやってきたのだ?
と思う。

ぜんぜん、なにも上達しとらんじゃないか。


そこで、初めて気付く。
そうか……。

……僕以外とは戦っていないということか。


いまどき、友達の家で将棋、なんてないだろうし
小学校3年生、というのもあるのかもしれない。


将棋に関しては、僕とこいつの遊びなんだと気付く。
息子にとって、将棋というのは、僕との遊びなんだと気付く。


ということは……。

息子は、勝とうと思って、僕に勝負を挑んできたわけではない。

負けるのを承知で、僕と将棋をしようと言ってきたのだ。

これから、何年もかけて、僕と将棋をしていこうということかもしれない。


……。


息子から取った、飛車を持った手が止まる。

将棋盤の向こうを見ると、息子が厳しい顔をしていた。

うーんと、天井を見上げて、考える。

詰めるつもりが、詰まってしまった。


僕は、息子に訊いた。


「なあ。訊きたいんだけどさ……。
 お前に合わせて、手を抜いて遊ぶのと
 全力で真剣に戦うのと、どっちが嬉しい?」


息子の答えを聞くと、僕は、勢いよく、飛車を将棋盤に落とす。


「王手!」


パチンという、木の音が、冬の乾いた部屋に響いた。


Posted by eno at January 28, 2008 01:01 PM


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