息子。
下の息子。
生まれてまだ半年。
だっこしたり、遊んだり
目の前で、ニコニコ、わーん、あーあー言ってるのを見て
「誰なんだ、お前?」とよく思う。
実際によく言う。
「誰なんだ? お前?」
上の息子は、一緒に暮らしてもう9年以上だし
それなりに、いろいろとコミュニケーションもしたし
なんとなく、人格というか個性もわかってきて
「こいつは、こういうやつだ」というのがよくわかる。
自分の息子なんだ、というのも、確実に思う。
しかし、この下の息子は、なんなんだ。
一緒に暮らしているけど、お前、なんなんだ。
笑う。
泣く。
回転して床をごろりん、ごろりん。
指をしゃぶる。
いつのまにか排泄している。
あれこれ触りたがる。
また、笑う。
また、泣く。
カミさんは、この子を産んだ。
だから、ずいぶん、感覚が違うだろう。
自分が産んだ子なんだから。
だけど、僕は産んでいない。
立ち会ったから、カミさんが産んだ子というのはわかるけど
僕との関係は、いったいなんなんだろう。
遺伝子がどう、とか、感覚的じゃなさすぎる。
カミさんのことを好き、が10とすれば
僕のことを好き、なんて、まだ1もないように思う。
だけど、僕のことをじっと見つめる。
笑顔でお腹を触ると、笑ってくれる。
笑ってくれたと喜ぶと、泣きだす。
「なんで泣くの?」と、思い、抱いてやる。
まだ、泣き続ける。
仕方がないので、気分転換に、抱いたまま外に出る。
外に出ると刺激が多いからか、気持ちが解放するからか、泣きやむ。
エレベーターに乗って、家に帰る。
エレベーターの鏡に、自分と、自分に抱かれた息子が映っている。
鏡を通して、僕を見つめている。
「誰なんだ? お前?」
ほんとうに、ようわからん。