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October 09, 2007


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『きららの仕事』

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『きららの仕事』、第一部が終わった。
16巻までの大部分がすしバトルだったが、新しい展開の第二部に期待したい。
(また、すしバトルだろうけど)

『きららの仕事』は、鮨のマンガである。
主人公は、女の子の鮨職人、海棠きらら。
江戸前最後の遺伝子のプライドを懸け、他の鮨職人と戦っていく。


料理マンガは多く存在する。
古くは『美味しんぼ』『ミスター味っ子』など。
ちょっと路線が違うが『大使閣下の料理人』がすごく好きだ。
『味いちもんめ』もいいなあ。
最近では『あんどーなつ』の展開に期待している。


さて。
料理マンガのキモは4つあると思っている。

1.キャラ&物語
2.うんちく(知識)
3.勝負
4.リアクション

このうち、3の「リアクション」に
ある程度、比重を置いたマンガが存在する。
料理マンガというより、「リアクションマンガ」というジャンルのようだ。

なぜ、リアクションでマンガが成り立つか?
というと、料理の味はマンガでは伝わらないからだ。

その「伝わらない」ということを逆手にとることで
料理マンガは、マンガの新しい道を切り開いてきた。

このリアクション(料理)マンガの、基礎を築いたのが
元祖リアクションマンガ、『ミスター味っ子』である。
食べた料理の感動で、大阪城を破壊したり(美味くて)。
モーゼの十戒のように海が切り開いたりもした。
その新しい作風に出会ったときは、感動したものだ。

その『ミスター味っ子』の遺伝子を引き継いで
見事に進化させたのが、『焼きたて!!ジャぱん』だった。
3年くらい前にblogに書いたが
当時『DEATH NOTE』と、並べているくらいの評価だ。

しかし、その後、リアクションマンガの壁にぶち当たってしまう。
それは「リアクションのインフレ」だ。
『焼きたて!!ジャぱん』は、リアクションを激しく展開した。
審査員がパンを食べて、臨死体験して、天国に行ったり。
マンガが突然「銀河鉄道999」の世界になったりもした。

最初は、カニぱんを食べた審査員が、手がカニになって横歩きとか
(まぁ、これもこうやって書くとすごいんだけど)
かわいいものだったが、どんどん加速して、インフレしてしまう。
インフレすると、「ぶっとび」=「幻想的リアクション」メインとなる。
そうなると「その先」が、苦しくなってしまう。

だって、「食べたら美味い」で→「マンガが銀河鉄道999の世界に」
なんていう、「幻想的リアクション」(以上だけど)をやってしまったら
もう、ちょっと「それ以上」は難しいでしょう。

そういえば、食べたら自分の生まれる前にタイムスリップしてしまい
自分を生んだと同時に死んでしまった母親を救った代わりに
歴史が動いてしまい、世界を変えてしまった、なんていう
「幻想的リアクション」の極み、みたいなものもあった。
破水した自分の母親を抱えて走るシーンなんて、なんだかもう
マンガのひとつの到達点だったように思える。

あらら。
話しが、ぜんぜん『きららの仕事』にいってないな。
ちゃんと戻ろう。
このblogまで『焼きたて!!ジャぱん』にやられてしまったようだ。


さて、『きららの仕事』。
『きららの仕事』、最初は、バトルマンガではなかった。
勝負はあるんだけど、「バトルのみ」ではなかった。
しかし、途中から「すしバトル」という大会がスタートしてしまう。

それが、ものすごく心配だった。
もうどう考えても、「リアクションマンガ」への転向である。

しかし、すぐには、「幻想的リアクション」には展開しなかった。
これは運がよかったといえる。
3人いる審査員が、「それができる」キャラクターではなかったからだ。
やってもフランス人審査員が「トレビアーン」とか言うくらいだった。

そして、満を持して、9巻。
全16巻だったので、その半分を過ぎてやっと
「幻想的リアクション」が始まる。
途中でわざわざ審査員が入れ替わったので、意図してのことだろう。

その記念すべきリアクションが
裕福な家庭に育った鋭い感性の女性食事ライター、小南由希のリアクション。
石川県七尾のコハダの鮨を食べ、言う。

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「はぁ…喉がキュンてして… まるでコハダに恋したみたいです」

その背景では、女子高生だった自分が、同級生の男に
「コハダくんこれ!」と言って、ラブレターを渡している。

コハダくん……て。

素晴らしかった。
「幻想的リアクション」のスタートとしては見事な技だ。
「幻想的リアクション」に行きつつも、飛びすぎない。
作者は、リアクションのインフレの怖さを、よくわかっていたのだろう。


そんな抑えたコントロールのおかげで、破綻せずに
第一部の最終回を終えた、『きららの仕事』。
伏線も散りばめつつ、第二部のスタートが楽しみだ。

くれぐれも、リアクションのインフレだけは、気をつけてもらいたい。


Posted by eno at October 09, 2007 01:39 AM


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