井雪。
ずいぶんと美味いものに出会った。
ずいぶんと美味い店ができたもんだ。
屋号は「井雪(いゆき)」。
場所は銀座。東銀座の歌舞伎座向かい、裏通りに佇む。
日本料理。和食。京料理。割烹。どう呼ぶのがよいのだろう。
7席のカウンターと個室が1つ。
いらしているお客様は雰囲気良く居心地がよい。
できたばかりの店内は、もう良い空気が流れていた。
が、そんなことはどーでもよい。
美味いかどうかだけが大事だ。
……唸るほど美味かった。
実際、美味くて唸った。
うぅむ。
料亭だ、割烹だ、懐石だと、僕もいろいろ和食を食べてきた。
雰囲気がよいとか、器が素晴らしいとか、歴史がどうとか
もうそんなことどーでもよい。
「うぅむ……」と唸るのは、料理の味だけにしたい。
少なくとも、比重はそっちではないだろうか。
そこで井雪。
上に書いたように雰囲気はよい。一枚のカウンターも器も美しい。
料理を運ぶテンポと気遣いは抜群だ。ご主人は名店「京味」の出身である。
だが、そんなことはどーでもよい。
井雪は唸る。とにかく美味い。おいしい。
ないのは店の歴史だけである。
漉した白子が下に隠れた、二層の茶碗蒸しが素晴らしかった。
「茶碗蒸し」なんて呼んではいけないかもしれないけど。
表面の美しい餡にさじを入れ、すくって食べる。
上層部を食べるひと口め。「おっ」と唸る。
……二口、三口と進めるうちに白子の層が顔を出して「おおっ」。
そして、あさりの味が口に広がり、「おぉおおっ」と唸る。
気付くと食べ終え、「うぅむ」と唸る。
「これぞ!」という「心の一品」がまた一つ加わった。
開店して間もない中、このような料理を生み出す力に感動する。
支えるものも、支えてくれる人も多いのだろう。
すでに連日満席。
僕も行くのが少し遅くなってしまった。
だけど、まだ今はよいほうだと思う。
すぐに「ずっといっぱいの店」になるだろうから。
他のお客様が楽しまれている中、写真を撮る気にはなれず
みなさんが帰った後の〆の「牛肉ご飯」だけの掲載となったことお許しください……。