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December 15, 2008


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ポーニョ、ポーニョ、ポニョ、という素晴らしさ

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カミさんが、誰かからいただいたのだと思うが
少年少女の合唱のCDが家にあって、その1曲目が『崖の上のポニョ』だった。


ピアノの演奏の上に、少年少女の美しい声で
「ポーニョ、ポニョ、ポニョ、さかなのこー」と楽しくハーモニー。

それに下の子(1歳半)が、ハマったおかげで、家で何度もリピートされている。
「ポニョ」をかけていれば、わーわー言わずに、静かに楽しく聞いている、というわけだ。

我が家では、いまごろ、流行っている。


映画、『崖の上のポニョ』は、映画館で見て
最近の宮崎さんの映画では、最も好きな作品となった。
主題歌も、ずいぶんキャッチーでいいなあ、と思っていた。

その後、テレビかなんかで、2〜3回くらいは聞いたと思うが
面白い曲だなあ、キャッチーだなあ、というくらいの感想だった。

正直、そこまでちゃんと聞いてなかったのだ。


しかし、その合唱CDが家でリピートすることになり
それが、ピアノオンリーの伴奏であることもあって、ものすごく耳に入ってきた。

ベース……というか、ピアノの一番下の音の動きが面白く
また、その上のコードも「こうかな?」と気になってしまった。

気になりすぎて、ちゃんとコードを取ってみたくて、たまらなくなった。
たまらなくなって、やってみた。これはよくあることだ。
日曜にオフィスに来て、なにをやってるのか、という気もするが
「どうなってるんだろ?」となったら、確かめるのが、音楽スキルの向上の1つである。


で、実際、確かめてみると、この曲は、やはり、ベースの動きが面白い。
面白いというか、ベースの動きで、曲のキャラクターができている。
それが、メロディのリズム感と、コード感と、絡まって
独特の子どもらしさを持った暖かく元気で、そしてちょっと寂しい世界観となっている。

言い換えれば、世界観が素晴らしい楽曲なのだ。
それが、作品の世界観と、ぴったり、というのが驚きなのだ。


まず、頭は「ポーニョ、ポーニョ、ポニョ」と、ものすごくキャッチーなメロディ。
「ポニョ」という言葉が、3→3→2,のリズムで入ってくる。

「ポーニョ」で「3」、また「ポーニョ」で「3」
最後の「ポニョ」だけ伸ばしがなくて「2」。

その、「3,3,2,のリズムで、歌詞は一緒」というのが、耳に残るわけだ。

例えが古くて、申しわけないが、これは、中森明菜の「Desire」であった
「(恋は)ダーンス、ダーンス、ダンス(ほーどー)」というのと同じである。
これは、耳に残る。

その「ポーニョ、ポーニョ、ポニョ」部分、頭の1小節目のコードは「F」なんだけど
ベースラインは、「ファ、ミ、レ、ド」、と下がっていく。
3,3,2,のメロディに、「F」というはっきりとしたコード
その上に(下だけど)、「ファ、ミ、レ、ド」の下降ベースというのが
まず頭で、曲の印象を形作っている。


次の「さかなの子ー」のコードは、「B♭→F/A」という動きなのだが
「B♭→F」でななく「B♭→F/A」と、ベースが、「シ♭→ファ」ではなく
「シ♭→ラ」と下がっているおかげで、「この曲は明るさMAXという楽曲ではないですよ」
というのを強く印象付ける。
その部分の歌詞、「さかなの子」という不思議さを感じる言葉と、見事にマッチしている。
この楽曲、ほかも、詩と曲の作り手が別、というのが信じられないくらい、ハマっている。


今回、ちょっとコードの説明があるので、「よくわからん」という人は申しわけないが
ほかに、うまく、この素晴らしさを、具体的に説明する手段がないので、すいません。


そして次の小節、「青い海から」という歌詞の部分だが、コードは、「C→Dm」と動く。
ここのベースライン、「ド→ド♯→レ→ド」という半音の動きがほんとに楽しい。
(ベースを入れて正確にいえば、「C→C♯dim→Dm→Dm/C」ということ)
これが、ベースまで普通に「C→Dm=ド→レ」の動きだったら、さっぱり違ってくる。
「ド→ド♯→レ→ド」という動きだから、楽しくなるのだ。
これは、上に書いた「ポーニョ、ポーニョ、ポニョ」のところの
「ファ→ミ→レ→ド」という下降するベースラインが、頭にあるから活きている。
その対比というか、流れが、この曲の頭というかサビのポイントだと思った。

ちなみに、この「C→C♯dim→Dm→Dm/C」という動きは、こちらは1小節だが
2小節かけて倍ゆっくりとした動きになって、先のサビ前の「あの子とはねると」という
ところでもういちどやってくる。
ベースも含めた、コードの動きがサビ頭の最初で、いちど頭に入っているため
それと同じコードの動きが、倍のゆったり感でもういちど展開されることによって
サビ前のゆったりと表現する部分が、ほんとにゆったりと感じられる。
久石さんが友達だったら、ほんとどこまで考えて作っているのか、訊いてみたいくらいだ。


続けてたら、1曲まるごと、解説することになるので、このへんで。


『主題歌』というのは、『主題歌』である意味がないと意味ないし
作品の世界観を、歌詞と一緒に、表現することが、その役割であると思う。

であるから、『ドラえもん』の主題歌は、何度かわろうと、あの
「こんなこといいな、できたらいいな」が、結局は、主題歌であるわけだ。

同じような例では、『ちびまる子ちゃん』の主題歌もそう。
そこまでマッチした楽曲に、「代わり」なんてあるわけがないのだ。

そういう意味で、『崖の上のポニョ』は、単純に詩と楽曲が素晴らしい
ということではなく、なにより、『崖の上のポニョ』という作品の世界観、キャラクター
その景色や光、色彩を、ほんとに見事に表現している、素晴らしい「主題歌」だと思う。


……と、前にも何度か、僕なりの楽曲解説をしているが
週1でもいいから、誰か、こういう感じの楽曲解説のblog、やってくれないかなあ。


Posted by eno at December 15, 2008 12:32 AM


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