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June 18, 2008


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YELLOW MAGIC ORCHESTRA IS ALIVE

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時間が経って落ち着いてきたので
Yellow Magic Orchestraの、ロンドン公演について書こうと思う。


今回の、Yellow Magic Orchestraのライブは
MELTDOWNという、SOUTH BANK FESTIVALの中の1演目。
毎年、異なるキュレーターによって、様々なアーティストが集められ
今年は、Massive Attackが、Yellow Magic Orchestraを招聘した。

会場はテムズ川沿いの、Royal Festival Hall。
水の近く、ということで、去年のパシフィコ横浜とある意味、雰囲気が似ている。
会場の前には、テムズ川を見下ろす、明るいオープンのBARがあり
一杯飲んでからライブへ、というスタイルがとても良い。
English Gardenが美味しかったが、僕の知ってるカクテル材料とはまったく違っていた。


会場に入って、AFTER SHOW PASSを受け取り、ウロウロすると物販を発見。
なんと、YMOのシャツが売っているではないか。
UK・ロンドンと、スペイン・ヒホンの日程も入っている。
僕は、あまりコレクター欲がないので、買わなかったが
しばらくした後、もういちど通ると、なんと、売り切れ。
横を見ると、ファンキーな英国人が、そのシャツを着て笑っている。
CDも売っており、販売員はいろいろ質問されて大変そうだった。
僕が、代わりに答えてあげようかと思った。


会場に入ると、ステージが近い。
前のほうの列だった人は、ちょっと残念だったのではないだろうか。
Rolandのシンセを発見して、驚くが、そういえば、前座がいたのだと納得。

開場時間から前座のスタートまで時間が少なかったので
わいわいしているうちに、ショウの前座、pivotのライブが始まる。


pivotの30分のライブが終わると、インターバル。
20分のインターバルの間に、7割入りだった客席は、ほぼ埋まっていた。
pivotのパフォーマンスは、すごく良かったのに勿体ない。
と思うが、20時にゃ来れねーよ、という人も多かったのだろう。

日本人は15%くらいだろうか。
10%ってことはないし、20%もいないかな、といった感じ。
ロンドンや周辺国に住む日本人も多いだろうから
もっと日本人率高いかと思っていたが、英国人率が高かった。


僕ら日本人からすれば、去年のHuman Audio Sponge公演もあるし
Yellow Magic Orchestra名義でも、京都でのLIVE EARTHがあったわけだが
ヨーロッパの彼らからすれば、28年ぶりのことだ。
28年というのは、もう具体的な長さではなく、ずっと昔のこと。
音楽関係の人も多いだろうし、メディアの人々もいるだろう。
3000の客席が、埋まってしまうのは当然のことだ。

特筆すべきは、年齢層の広さ。
メインは30代、40代だろうが、10代〜50代くらいまで幅広い。
女性率が高いのは、カップルで見に来る人が多いのだろう。


去年、パシフィコで聞いた、アンビエントのSEが静かに聞こえてくる。
暗転してからではなく、インターバル中に、鳥の声や虫の音が流れ
会場をゆっくりと包んでいく効果は大きかった。

やがて、サポートメンバー、そして、Yellow Magic Orchestraの3人の入場。
そして、HARUOMI HOSONO、YUKIHIRO TAKAHASHI、RYUICHI SAKAMOTOの
文字が、懐かしいオフィシャルの順序で、大きなスクリーンに映し出され
YELLOW MAGIC ORCHESTRA in MELTDOWN@ROYAL FESTIVAL HALLの文字。

大文字の「YELLOW MAGIC ORCHESTRA」に、圧倒される、僕と会場。

正直、こんなに反応良いのか、と驚いた。
拍手と歓声がすごい。大歓声。会場が独特の雰囲気になった。
テクノポップのLEGENDに対する敬意と、これからの演奏の期待だろう。


ライブは、以心電信からスタート。
その1曲目で
あぁ、これは、「いまのYellow Magic Orchestra」をみせるのだなと思った。


ライブ前、2つのパターンがあると思っていた。
そのどちらかであると。
1つは、往年の名曲を、数曲混ぜたセットリスト。
1つは、去年の日本からの流れの、いまのセットリスト。

前者であれば、Behind The Maskなどでスタートするであろうと。
しかし、違った。

Yellow Magic Orchestraは、いまも生きているのだ。

ファンとしては、前者を期待していたわけだが
1曲目で趣旨を理解し、Yellow Magic Orchestraのライブを楽しむことにした。


その後、SPORTS MEN、FLY ME TO THE RIVER、MARS、FLAKESと続き
そして、RIOT IN LAGOS。

ここ数年、すべてのRIOT IN LAGOSのライブを観ていると思うが
このロンドンでの、RIOT IN LAGOSが、最も素晴らしい演奏だった。
ギターが、Christian Fenneszだからだろうか。
会場のPAのせいか、あの気持ちよいバスドラの輪郭はくっきりとしていなかったが
これまた、ずいぶんファンタジーな、RIOT IN LAGOSだった。
終わると、会場からの反応がずいぶんヒートアップしているのを感じた。

会場も一体となって、それをライブと呼ぶならば
失礼ながら、RIOT IN LAGOSから、ライブがスタートしたようにも思える。


そして、ONGAKU、RESCUE、TURN TURNと続く。
ONGAKUの反応が良かったのは、LONDONにも熱狂的なファンがいるのだなと思う。
そういえば、あの昔のYMOシャツを着ている英国人もいた。
よく見ると、プリントが疎らだったので訊くと、自分で作ったと言っていた。すごい。


そして、TOKYO TOWN PAGES。
聴いたこともない新曲なのに、それがその曲であるとわかるのは
曲の持つ雰囲気と、自分がディープなファンであるという証拠だ。

さらに、THE CITY OF LIGHTと新曲が続く。
THE CITY OF LIGHTは、ライブ初演奏であるが、これがすごく良かった。
どういう趣味なのか、最初は理解できなかったが、会場が沸く。
純粋にパフォーマンスが良かったことの反応だろうかと思うが
ヨーロッパの人は、こういう曲、好きかもしれないと、理解する。


そして、SUPREME SECRET、WONDERFUL TO ME。
そういえば、もうちょっと手前から、ライブの後半は、幸宏さんはオンドラム。
幸宏さんがドラムに入ってから、会場はさらに盛り上がった。
正直、全曲、叩いてほしかったなあと思う。
ライブがスタートして、1曲目、オンドラムだったらもっと違ったように思う。
途中、叩かない曲があっても、1曲目からしばらくオンドラムであったらなあ。


次は、なんと、TIBETAN DANCE。
それは、まったく予想もしなかった。
これは深い。

とはいえ、歌詞があるわけではないので、セットリストを見なければ
「TIBETAN」というメッセージが伝わらないのではないだろうか、と思ったが
スクリーンには、ダライ・ラマのメッセージ。
やられた。参った。カッコいい。

これをいま、ロンドンで演奏するというのは深い。
28年前のライブより、カッコいいじゃないか、Yellow Magic Orchestra。


そして、その流れのまま、WAR & PEACE。
スクリーンには、「is war as old as gravity?」という文字が流れる。
「are there animals that like peace? are there animals that like war?」
メッセージは、そのまま英語で、会場にいる3000人に伝わる。

これは、確かに、いまのYellow Magic Orchestraだ。
War & Peaceは、Yellow Magic Orchestraの曲になった。
かつての、Riot in Lagosのように。

Yellow Magic Orchestraがいま、世界に飛び出す意義を感じる。

TIBETAN DANCEから、WAR & PEACEの流れ。

曲が終わると、大きな拍手が起こった。
いまのYellow Magic Orchestraが、ロンドンの聴衆に、その意義も含めて
受け入れられた瞬間ではなかっただろうか。


そして、RYDEEN 79/07。
さすがに知っている人も多いと思え、終わると、大歓声。
メンバーはステージを去り、その歓声のまま、アンコールを呼びかける。

ずいぶんと早く、メンバーがステージに戻り、CHRONOGRAPHを演奏する。
また去るメンバーに、さらに演奏を呼びかける会場。

2度目のアンコールはCUE。
なんと、坂本さんではなく、幸宏さんがドラム。


2曲のアンコールが終わり、ライブ終了とは誰もが思ってはいるが
拍手は、まったく鳴りやまない。
やがて、スタンディング・オベーション。

鳴りやまない歓声に答えるように、3人のメンバーが、笑顔でステージに戻る。
カーテンコールというのは意外だった。
Yellow Magic Orchestraのカーテンコール。


ライブが終了した。


すべてが終了し、周囲を見渡し、ここはロンドンなんだ、ということを改めて想う。

正直、観客の反応は、二分だったのではないだろうか。
最初に書いたように、往年の名曲を楽しみにしていたファンもいただろう。

しかし、これが正しかったように思える。
正しい、なんて、失礼な意見ではあるが、こうあるべきだった。
いまのYellow Magic Orchestraを見せることが、当然のことだった。

Yellow Magic Orchestraは、いまも生きているのだ。

いまのYellow Magic Orchestraを見せることに意味があった。


ただ、それには1つ条件がある。

Yellow Magic Orchestraは、これからも走り続けなければならない。

来年なのか、数年後なのか、わからないが
再び、海外でライブをやるべきだ。もちろん、日本でもやるべきだが。

海外でのライブを、何度か繰り返して、その時々のパフォーマンスをし
その時々のメッセージを残し、生き続けてこそ、この日の意味がある。


大昔、奇妙な人民服に身を包んだ日本人が
シンセサイザーという奇妙な楽器で、ロンドンで演奏した。

当時、強烈な印象を残した、パフォーマンスだっただろうが
それをいま、繰り返す意味は、どこにも存在しない。


Yellow Magic Orchestraは、最後まで一言も発すことなく、ライブを終了したが
強いメッセージと、いまのYellow Magic Orchestraの姿を、ロンドンの地に残した。


Yellow Magic Orchestraは生きている。

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Posted by eno at June 18, 2008 08:00 AM


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