1人での出張だったので
あえて、「のぞみ」ではなく、「ひかり」に乗った。
もちろん、「のぞみ」のほうが速いし、早い。
例えば新大阪まで、「ひかり」のほうが20〜25分くらい早く着く。
チケットが売り切れていない限り
普通は「のぞみ」を使うため、「ひかり」のほうはすいている。
隣の席が空いていることが多い。
隣どころか1列に自分だけだったりして、前後もいなかったりして
「ひかり」は、ずいぶんと、ゆったりしている。
ガラガラというわけではないが
基本満席に近い、「のぞみ」とはずいぶん違う環境が手に入る。
わざわざ、時間がかかるほうに乗っているという気分もあって
ゆったり気分で、列車での時間を過ごした。
ゆったり気分で食事しながら、薄い本を1冊読み終えた。
といっても、家を出る時間を、わずかに早めるだけである。
それで保たれる、ゆったりとした時間。
なるべく早く。なるべく短く。10分でも、5分でも早く。
なんていう、流れと違うところにいたかった。
「こうするのがあたりまえ」、というものから
ちょっと自分をずらして、あえて流れからずれてみて
味わえるものがある。見えてくるものがある。
「自分」という、存在やリズムが、くっきりとしてくる。
「時間の無駄」「お金の無駄」「考えるだけ無駄」
「無駄」ってなんだろうと思う。
「無駄」ってなんだ?
子どもの頃。
決まった道を使って、学校から帰るのがいやで
ぶらぶらと寄り道をしながら、家に帰った。
いつから、効率的に、効率的にと
同じルートを繰り返してばかりの
面白味のないリズムの中で、生きるようになってしまったのだろう。
本を閉じて、座席のテーブルに置いて
窓の外に目をやると
大きな、富士山が、美しく、そこにあった。