恵比寿南には、クロという名のカラスがいる。
ま、勝手にクロと名付けたんだけど。
そんなカラスの個体差なんて
わかるわけないでしょ、と突っ込む方も
いらっしゃると思いますが、わかるんです。
クロはかなり声が変わっている。
カァカァと鳴くわけではなく、口ごもったような声。
なんていうんだろ、口を閉じたまま喋ったような
そんな声をしている。
声だけ聞いたら、カラスとわからないかもしれない。
そんな特徴ある声のおかげで
朝、オフィスから家に帰るときなど、よくクロに会う。
クロはだいたい、電線の上にいたり、屋根の上にいたり。
そのヘンな声で、喋るように鳴いている。
このへんのカラスの中でも、エラい存在なのかもしれない。
いつも、堂々としている。
身体も大きい。
僕はクロに会うたび「あ、クロだ」と
「おはようクロ」とか「クロ元気?」とか
コミュニケーションを図ろうとするが
まったく相手にされない。
こっちは、1つの個体として認識しているけど
残念ながら、向こうにとっては僕は
人間のOne of Themのようだ。
最近、雨が多く、台風なんかもやってきて
たまたまかもしれないが、クロにまったく会わない。
この数週間、会ってない。
ちょっと寂しい。
愛とか情が芽生えるのって
相手を個として認識することなのかなあと思った。
クロに会いたいなあ。
と、思う。
なぜ、そこまで思うのか、不思議だ。
個体を認識しちゃったら、そうなっちゃうのかなあ。