僕は、おーなり由子が大好きだった。
いや、いまも大好きなんだけど、好きだというのを忘れていた。
この数年、いろいろと忙しかった。
忙しいときこそ、おーなり由子の本を読んで、見て
心を落ち着かせたりすればいいんだろうけど
忙しいときには、なかなか、そういう気にもなれなくて。
忙しいというのは、時間的にどう、という意味ではない。
そういう意味では、いまもあまり変わらず、忙しい。
余裕がなかった。ゆったりとした気持ちになれなかった。
いまは、少し、余裕があるんだと思う。
そんなタイミングで、おーなり由子の新刊が出た。
『ひらがな暦 三六六日の絵ことば歳時記』という本。
毎日、毎日の、ちょっとした行事や、季節の移り変わり。
そんな、1日1日を大切に、ちょっとした時間や瞬間を大切にする喜び。
この日本という国で暮らす幸せを、1月1日から、12月31日まで
1日1ページ、366日、描かれた本だ。
素晴らしい。
ページのどれもが素晴らしい。
「ステキ!」な本は、たまにあるけれど
「ステキ!」どころじゃない。そんな軽いもんじゃない。
もう、クラっときた。
心の奥から、グラグラきた。
忘れていた感覚が多すぎて。
それらが、ものすごく大切だということを思い出させられて。
たしかに、いつか、どこかに置いてきちゃったんだよなあ。
忙しいとか、やることあるとか、そんなことばっかり言って。
もう、ほんとバカでね。
幸せというのは、どう愛おしさを感じるかであって
いや、そんなこと、わかっているんだけど
だけど、なかなか、生活と折り合いがつかないんだよなあ。
この大好きなテンポ、におい、湿度、色彩と
いま、自分のやるべきことと、どう折り合いをつけて生きていこう。
強盗しちゃって、警官に囲まれちゃって、仕方なしに立て籠もっていたら
窓の外から、ハンドマイクの母親の声が聞こえちゃった、犯人の気分だよ。
素晴らしすぎて、身体に悪い。
そして、ものすごく精神に良い。
どっちに転ぶかは、ここからの毎日だ。