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September 29, 2006


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ミーナの行進

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いやー面白かった。
ものすごく満足した。世界に浸ってました完全に。
前から気になりつつ、今ごろになって読んだわけですが。

とても美しく、瑞々しく、清々しく、暖かく、希望のある作品。

といっても、以前何度かこのblogでオススメしました
伊坂幸太郎さんの作品のような、エンタメ方向の小説ではありませんので
「伊坂が面白かったから、こっちも買おう」とか思うと
好き嫌いあると思いますので、ご注意を。
といいつつ、小説が嫌いでない人なら皆に読んでもらいたいくらいの作品。

母と二人暮らしの中学校1年生の主人公、朋子が、家の事情で東京の洋裁学校に
通うことになったため、芦屋の伯母さんの家に預けられるという
その「家」での、1年間を描いたお話。舞台は1972年。

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お世話になる芦屋のその家は、山の上に建っている洋館だったりして
伯父さんは清涼飲料水の会社の社長だったり、おばあさんがドイツ人だったり
お手伝いさんや庭師の方がいたりと、主人公は「昨日までの生活」と
「今日から1年間の生活」が、変わることになる。
それまでには体験したことのない生活の輪、家族の輪に入っていくことになる主人公。
そんなドキドキの毎日が、主人公に近い1つ年下の娘、ミーナとの交流を中心に描かれる。

これから読まれる方にもったいないんで、あまり書かないことにしますが
上のプロットだけだと、あまり面白い感じがしないんで、ちょっとだけ。

その家の娘、ミーナは「マッチ箱」を集めるのが趣味なんですが
ただ集めているわけではなく、マッチの箱の図柄から「物語」を作り出す。
ぜんそく持ちで、身体も弱く、自分の足で外へ出かけることもままならないミーナが
巧みな想像力で、マッチ箱の図柄から創造する、自分だけの「世界」。
その世界を、主人公、朋子に伝えることで、共有していく。世界が広がる。

マッチ箱の図柄〜
シーソーに乗ったゾウの物語。
三日月と二匹のタツノオトシゴの物語。
ガラス瓶に流れ星を集める少女の物語。

キャー! もうステキー!!
ステキすぎる。鼻血ブーと出る! 春巻き1本おかわり!

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だめだ、興奮してしまった。
ちゃんと書こう。

そんなステキが、散りばめられた作品なんで
そういうとこだけで、もう買って&読んでいただければ充分なんですが
世界の構築がすごいわけです。
基本的には、伯母さんの「家」という、閉ざされた世界でのお話なんで
完全に閉ざされている世界で話は進む。なのに清々しい。どこも息苦しくない。
その家にいるミーナは病弱で、その世界はさらに閉ざされている。
そのミーナが描くマッチ箱の世界は、本来、さらに小さい構造になるんだけど
その創造性によって、この宇宙のどこへとも繋がっている。広がっている。
そこに、主人公である朋子が別の世界からやってくる、という構造。

さらには、回想という形式も含めての時間軸の世界構造。
主人公とミーナのそれまで過ごした時間と、出会ってからの時間。
1年間という限定された時間での2人の成長。
そして、そこから解放された未来である、今。

生活や文化なども含めた空間軸と、時間軸のそれぞれ世界の構造が見事で
空間と時間の、いずれも限定された、閉ざされたものなのに、広がりを持っている。
まあ見事。

みなさんも、ぜひステキ世界へ、どうぞ。

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先日、伊藤たかみさんの『八月の路上に捨てる』を有隣堂に買いに行ったら
どこにもなく、探すと「女性作家」のコーナーに置いてあった。
「伊藤たかみ」という名が紛らわしいのだろうか。芥川賞までとったのに。


Posted by eno at September 29, 2006 05:39 PM


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