宇宙関連の本は、やたらと買っている。
たぶん、オフィスと家を足したら100冊以上はあるだろうから
中規模の書店の宇宙コーナーくらいにはなると思う。
といっても、相対性理論からビッグバン理論、量子論と
ある程度内容は同じになるわけで、宇宙に関する新刊を買うというのは
少しだけ夢のある話だったり、ちょっとトンデモな内容だったり
作家なりの考えが入っている、立証がまだできていないものを買うことになる。
だけど、宇宙関連が好きなので、相変わらずに買う。
ちょっとでも新しい理論とか、考えを期待して買ってしまう。
と、いつもの感じで買ったのが、サイモン・シン の『ビッグバン宇宙論(上下)』。
著者の名前も書名も意識しないまま買って、読んだ。
最初は、ずいぶんと丁寧に書かれているなあと感じながら読む。
ビッグバン宇宙論という名前の書籍なのに、宇宙と対象とした研究や理論の
ほんと初めっから書かれている。ほうほう、ここから初めますか、と読み続ける。
が、一向に進まない。上下刊とはいえ、こんなペースで大丈夫だろうかと心配になってくる。
プトレマイオスやコペルニクス、宇宙は地球が中心だ、いやいや太陽だという争いを
いくら丁寧とはいえ、まだ書きますか? と、スローペースに不安になる。
このぶんでは、新しい理論なんて出てこないように思える。
で、読了。
やはり、新しい理論など出てくる余裕はなかった。
それどころか、書名の通り、ビッグバン宇宙論でお終い。
が、全て僕の読み違いというか、先入観の問題で、とても素晴らしい本だった。
面白かった。読み応えがあった。
が、書き方が上手なのであっという間に読んだ。
著者のサイモン・シンって『フェルマーの最終定理』の人だったんですね。
途中で気付いたんだけど、それでよくわかった。
この本は、「宇宙ってこうなってるのかな?」と人類が考え始めてから
ビッグバン宇宙論に辿り着くまでを、しっかりと掘り下げて書いたものなんです。
逆にいうと、未確定や不確定なものは、まったく書かれていない。
ここまでが、しっかりと「間違いない」と言える範囲なわけだ。
その範囲の中で、いままでは、理論の説明だけで終わっていた分野を
1から10まで流れを切らずに続ける形で、太古の人々が星を見上げて「こういうことかな?」と
思ったときから、どうやってビッグバン宇宙論まで至るかを、人間を中心に丁寧に描いている。
AがZまで行くには、BもCもDも必要なわけだけど、そこにドラマがあったり奇跡がある。
セレンディピティ(偶然から重大な発明、発見をしちゃうこと)から学ぶことは大きいね。
子どもの頃、学校で習う歴史は、点と点ばかりの暗記学習でつまらないが
大人になってから歴史を物語で繋いでしっかり読むと、面白かったりすることがあるが
それとすごく似ている。
宇宙論なんて全く興味がなかったという人も、この本から入ってみてはどうだろうか。
創世記の第一章に、「神は言われた。『光あれ』」とあるけれど
宇宙の最初にほんとにあった、「ビッグバン」という時空のきっかけに
人類が届くまでの物語が、丁寧に描かれた本です。