同じスタイルで追求していくか、新しいスタイルを開拓するか…。
それは、どんなジャンルでも見ることができる「選択」である。
ゲームだって、昔ながらのゲームの進化型といったもあれば
新しいゲームの流れとなるソフトもある。
食べ物の世界だとラーメンは、昔から大きくスタイルがわかれている。
昔ながらの東京醤油ラーメンや、しなそば系のラーメン。
それに対抗して、新しい味やスタイルのラーメン屋もいっぱいある。
そんな流れが、とんかつの世界にも出てきた。
そう、『きむかつ』の登場である。
ミルフィーユ式の「薄切り豚肉重ね合わせ」というのは
それまで誰も思いつかなった、新しいスタイルである。
その新しさ、ユニーク性、ネーミングのうまさなどもあって
マスコミに多く取り上げられたこともあり
あっという間に超有名、超人気店となった。
とんかつ新時代の突入である。
ヌーヴェルとんかつによる、ヌーヴェル・ヴァーグである。
という中で、昔ながらの…というか普通のとんかつも見直したい。
ヌーヴェルとんかつのスターを、『きむかつ』であるとするなら
クラシックとんかつのスターは2軒。
1軒は、御成門の『燕楽(えんらく)』。
そして、もう1軒が、さっきランチで食べてきた
恵比寿と目黒の真ん中くらいにある『天津』である。(目黒区三田2−8−1)
両店とも、もう普通のとんかつ。
普通のとんかつなのに、かなり違う。かなり美味い。
普通といっても、本当に普通、なのではなく
目に見える部分に変化はないが、見えない部分のこだわりとスキルが半端じゃない。
御成門の『燕楽(えんらく)』のほうは、ロースカツがうまい。
脂の部分がもう反則である。脂ってこんなに美味いのかと感心する。
それに対して、『天津』のほうは、ヒレカツがうまい。
上ヒレカツは1600円もするけれど、そこらのトンカツとは明らかに違う。
肉柔らかい&カツはサクサク。
一口目で、新たなトンカツワールドへの第一歩を感じる。
頭の中で、関係者がテープカットを始める。
だから、なにも書くことがない。
うまい、というただそれだけなのだ。
目黒か恵比寿の近くに家かオフィス、用事がある方はぜひ。
なにも特別なことはないが、美味しいトンカツだ。
が、しかし。
僕がこの店を好きになれないところが1つある。
それは、「張り紙」の多さだ。
やれ禁煙だ、やれ足を組むなから始まって
大声でケータイはだめよとか、荷物はテーブルの下にとか
もう、うっせーよ!!
さっぱり、いい気がしない。
まず入り口のドアから、子どもは迷惑になるから断るときがあるとか
もう、そんなの書く必要ねぇじゃん!
すんげぇ下がる。食う前、むちゃ下がる。
トンカツがうまくなかったら1ヶ月で潰れる。
が、うまい。
トンカツはうまい。
くつろぎとか、気持ちよさとか、さっぱりない。どこにもない。
あっても消える。すぐ消える。即消。
だって、カウンターのあちこちとか、テーブルごとに
小さい注意書き(下の写真)が貼ってあって、禁煙のプレートがあちこち立っていて
さらに大きな紙に「店主からのメッセージ」みたいな感じであって
それがそんなに大きくない店内に4〜5カ所、貼ってあるのよ。
すんげぇ下がる。
が、うまい。
が、下がる。
だから、たまにしか行く気になれない。
で、行くと下がる。
が、うまい。