「『きみとぼくと立体。』の設計」、第三回となりました。
第三回目となる今回は、「2人プレイ〜協力と対戦」について書きたいと思います。
このゲームの1つの大きな開発テーマであり、とても苦労した部分ですので
それを取り上げることにしました。
実はこのゲームは、2人プレイから先に作りました。
もともと、「未来のおもちゃ」を想定して作ったゲームなのです。
現在ではできないけれど、いつか未来には、実現しそうなおもちゃ。
例えば、テーブルの上に、肩幅くらいの大きなキューブが浮いていて
(さっそくここが、現在では実現が難しいわけですが)
そこに、小さな人形を、ぽいぽい投げ込んで遊ぶ。
キューブは、人形の重みで傾いてしまう。
人形は、まるで生きているかのように、自律して動きまわる。
(ここも、実現不可能ですね、いま作るのは)
キューブが傾いたら焦り、倒れたり、助け合ったり、滑り落ちたり......。
なんておもちゃを考えました。
それが、スタートでした。
単にそれを1人で遊ぶより、2人でぽいぽい投げ合ったほうが
いろんなことが起きて楽しいだろうなあと思いました。
そんな思いもあって、当初はちょっと違うルールだったのですが
2人プレイのゲームから作り始めました。
逆にいえば、1人プレイのゲームは、どうにかなると思っていたのです。
実際には、そんな簡単なものではなかったわけですが......。
2人用で面白いものができれば、1人用、2人用と
それぞれ、異なる要素を入れ込んで、仕上げればよいだろう。
なんて思っていました。
そんな思いが、間違いだったかどうかは別として
いずれにせよ、2人用ゲームから先に作り始めたのです。
その「2人用ゲーム」のテーマが、「協力しながら対戦する」というものでした。
当初は、それがなにを示すか、というのは、かなり漠然としていたのですが
このゲームの2人用プレイを考えるとき、対戦型にするか
協力プレイ型にするか、真剣に何度も考えました。何度も議論しました。
協力プレイのほうが、新しい面白さを生み出せるような気がしましたし
このゲームの持っている雰囲気に合っていると、考えましたが
やはり、「協力だけ」、というのは、なにかちょっと物足りない。
スパイスがないといいますか、合ってるんだけど、ちょっと違うよねえという。
その結果、「基本的には協力プレイだけど、最終的には対戦」という
かなり無理なテーマを発見し、それを目標としました。
出来上がったゲームをやっていただければ、それが、その通りの答えなのですが
そこに至るまでは、かなり試行錯誤がありました。
例えば、プレイ中、最初のお題をクリアしたとき
CUBE1をクリアして、CUBE1からCUBE2に移行するときです。
そこで、「現在の成績」を出せば、プレイは盛り上がります。
その場で、1ラウンドごとに「勝ち負け」を決定づけてもよいですし
「現在の結果」みたいなものでもよいと思います。
ですが、それでは、「協力」という感じが薄れてしまう。
常に「勝ち負け」を意識しないとならなくなってしまう。
そんなこともあって、ゲームをクリアした後に
「というわけで、では......!」みたいな形で、成績発表をすることにしました。
それまでは協力プレイしていたのに
最後になって、突然、「勝ち負けどっち!?」というふうに転換する。
まるで、マラソン大会で一緒に走っていたのに、最後になって
ズババババと走っていくような。「最後、そこかーい」、という。
ちょっと違いますか。
いずれにせよ、このことによって、ちょっとした不安定さが生じます。
それがやりたいフィーリングだったのです。
基本的には、そうすることによって、プレイ中は、勝ち負けを意識しない。
そんなこと考えているより、クリアすること、を、2人は目指すわけです。
その結果、どのくらいの成績だったかが表示されて
さらに、その結果、「どちらが勝った、負けた」、となる。
結果論的な、勝敗です。
しかし、そんなプレイを繰り返しているうちに、2人のプレイに余裕が出てきます。
すると、ゲーム中から、ある程度、最終的な「勝ち」、を意識したプレイが出てくる。
「ん? ちょっと、ひょっとして『勝とう』としてる?」
というような。
そんな関係性が面白いなあと思いました。
「そんなこと考えているから、失敗したじゃん!」とか。
「考えてないって!」とか。
もちろん、さらに上手くなれば、ある程度、協力を忘れてプレイしても
それぞれのスキルで、クリアができるようになり
そうすると、最初から、「勝った負けた」をゴールとするプレイもできるようになる。
そんな拡がりが、プレイを繰り返すことによって、生まれればよいなと思い
協力と対戦の、その価値を、どちらにどう置くか、というのは
プレイヤーのスキルと考えに任せてプレイできるようなゲーム設計にしました。
プレイヤーによって感じる大小は別として、なにより、それによって
「新しいフィーリングの1つ」が生まれたことは、大きかったと思います。
そして、もう1つ。
さらにもう1つ、最後に、おまけを付け足しました。
それは、勝ち負けの後の、「2人の相性」というもの。
どういう要素で算出しているか、を伝えてしまうと、面白くなくなってしまうので
ここでは書きませんが、いくつかの要素によって、2人の相性が表現されます。
ハートマークがいくつか、というのと、それを表現した文章。
ま、くだらないのですが、「プリン半分に分けてます」とか
「ネコとアヒルが恋愛中」とか、そんなものです。
なぜ、この「相性診断」を付けたかといいますと
「協力」の末、クリアして、最後、「勝った負けた」で終わってしまうと
なんというか、ちょっとフィーリングが違うと感じたのです。
そんな思いで、最後、「2人の相性」を表現することにしました。
表現的には、くだらない感じで。
だけど、実際、うまく2人がプレイすると、評価が高くなったりして
それはそれで、「リアルな結果だなあ」と、2人が感じたり。
いまだに覚えているのは、テストプレイのときでした。
多くのテストプレイヤーさんに、テストプレイしていただきました。
メインはデバッグをしてもらいつつ、感想もいただく、という。
まだ、最後のテストプレイ、という感じではないときです。
そこで、この、おまけのように付けた「相性診断」の評価が高かったのです。
「面白い」と書いてくださる人が多かった。
とくに「上司と部下」とか「男性と女性」など
ちょっと距離がある関係のほうが、面白い。盛り上がる。
このゲームの2人プレイは、結局のところ、面白いフィーリングが生みだしたい
という狙いが大きかったので、それはよいことだなと思いました。
「2人の相性」の結果の文章を急遽、倍以上のバリエーションを書くことにしました。
さすがに忙しかった頃で、頭も回らなくなっていた時期で
アホでちょっと笑えて......だけど......リアリティ? みたいな文章を書くのは
とても、大変だったことを覚えています。
「いつもだったら、こういうの、得意分野なのに!」と叫んでいたことを思い出します。
長くなりましたが、このへんで。
そんな思いと、狙いで、2人用ゲームを企画し、設計し、開発していました。
なにかを感じてくださったら、嬉しく思います。
次回はついに最終回。
第四回、「仲間との開発」について、書きたいと思います。
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