最初にお伝えしますが、これ実話です。
会話なんで、細かい部分は違うと思いますが、脚色していません。
先日のこと。
タクシーにケータイを置き忘れて降りてしまった。
すぐに気付いたのだが、タクシーは既に小さくなっていた。
急いで家に戻り、タクシー会社に電話。
車内に連絡がつけば、なんとかなるかもしれない。
領収証に記載されている番号に電話する。
「あってくれ……」と祈る。
……が、「現在使われておりません……」という声。
慌てすぎてミスったのだろうと、再度電話しても同じ。
何度電話しても同じ結果。
そんなバカな。
領収証に記載の電話番号にかからないなんてアリ?
同じ領収証に書いてあった、タクシーセンターに電話。
タクシーセンターの人に事情を伝えると
領収証記載の番号が間違っていることが判明。
下一桁めと、下二桁めの番号が逆になっていた……って、マジ。
このヘンでちょっとイヤな予感がスタート。
タクシーセンターの人に聞いた、正しい番号に電話。
かかった。
「すいません、いまさっき、そちらのタクシーを使って、降りたのですが
タクシーの中に、ケータイ電話を忘れてしまって……」
「はぁ……。それで?」
「それで、って、いや、なんとかならないかなあと思って、電話したのですが」
「困ったなぁ……」
「困ったって?」
「困ったなぁ……」
「いやいや、困っているのはこっちじゃないすか。連絡取る方法はないですかね?」
「じゃあ、そちらの連絡先を聞いてもいいですか?」
「もちろんです、03−****……」
「じゃあ、連絡してみますね」
「じゃ、待ってます」
しばらくしても、10分しても、20分しても連絡はない。
再度、タクシー会社に電話する。
「もしもし」
「……ああ、さっきの人ですか?」
「はい、そうです。連絡取れましたか?」
「困るんですよ! できないんですよ」
「え? できないって?」
「こっちは、さっき聞いた番号に3回も電話してるんだよ!」
「え? 3回?」
「そっちにかけたのに、出ないじゃないか!」
「かけたって、こっちに……この家にですか?」
「3回も!」
「いえ、かかってない……。いや、じゃ、すいません……で、連絡取れたんですか?」
「だから、3回もかけたんだよ」
「いや、そうじゃなくて……、タクシーと連絡取れたんですか?」
「タクシーは……困ったなぁ……」
「え? なんで? 連絡してくださいよ」
「明日の朝、事務所に来てよ」
「え?」
「それじゃだめ?」
「いや、そちらに伺うのはいいんですけど……。行ってなかったら無駄じゃないですか。
ていうか、なくならない前に連絡取りたいんですよ」
「朝になったら、事務所に来て」
「ちょっと待ってよ。取れないなら仕方ないけど、取れるなら取ってくださいよ!
連絡取ってくれるのは義務じゃないですか? 義務じゃないかもしれないけどさ」
「じゃ、忘れものしたのは義務ですか? 忘れ物は義務ですか?」
「意味、わかんないですよ」
「だって、そっちが悪いんじゃないですか!」
「いや……、たしかにこっちが悪いんだけど、もうちょっと考えてくれても……」
「もうさ、交番行ってよ!」
「交番……て、交番も行くかもしれないけど、連絡取ってほしいんですよ!」
「うぅーん」
「うぅーんて……。連絡取れないんですか? 取れないなら仕方ないけど……。
連絡できるんだったら……ていうか、なんで連絡してくれないんですか?」
「川村常務がいないんだよ」
「そんなのこっちは知らないですよ!」
「もう、明日の朝来てよ!」
「なんで? こっちはお客ですよ。客として、そちらのタクシーに乗って、降りた。
そのとき、ケータイを車内に忘れた。それはこっちが悪いのかもしれないけど……」
「え? お客?」
「お客ですよ」
「あなた、ドライバーじゃないの?」
えぇーーーーーーっ!!!!!!!!!!!!!!!!
「ドライバーのわけないじゃないですか! まさか、ずっとドライバーだと……
いや、そんなことないよ。ていうか、なにこれ? どーなってるのこれ?」
「ねえ、明日来てよ」
「もう、わかった。はい。もう諦めた。無理だ。
だけど、明日の朝に行っても、なかったら意味ないから、朝に電話します。
何時だったら、誰か来ますか?」
「7時」
「じゃ、7時に電話します。もういいです」
7時起床。
電話をする。
おっ、違う人だ。
「ありませんねえ……」
がくっ。