島耕作が、常務版とヤング版の同時発売だったので、新幹線で読んだ。
作者、弘兼憲史による、サラリーマンが主人公の島耕作サーガ。
「課長島耕作」から始まって、「部長島耕作」、「取締役島耕作」ときて
現在は「常務島耕作」と、主人公がリアルタイムに出世していく漫画である。
また、主人公の「入社時代」を描いた、外伝的「ヤング島耕作」も連載中。
他のシリーズは、ほぼリアルタイムなんだけど
「ヤング島耕作」のみ「過去」の漫画となるため、仕掛けが多い。
「課長島耕作」を先に読んでいると、ニヤリとするシーン
「あぁ、これがあぁなったのかあ」的な仕掛けが多くある。
スターウォーズでいう、エピソード1〜3みたいなものか。
まぁ、スターウォーズでいう「どうやって、ダースベーダーになったか?」
みたいな楽しみはないんだけども。(「それで課長になったのかぁ!」はないな)
それは、現在連載中の「常務島耕作」との間にもあって
この度は同時発売を活かして、表紙まで関連させた。(上の写真)
方やケータイ、方やニコンの一眼レフ。
ただ、ケータイのほうが、P701iDだったらなぁとマニアックに思う。
現在の「常務島耕作」は、対中ビジネスが主題。
だけど、どうしても現実からディレイした「なぞり」っぽい内容になっちゃうから
対中ビジネスから、うまく路線変更してほしいなと思う。
読者の世代を考えると、普通に「知っている」事柄でしかないから
自分も含めてわくわくしないと思えるんだけどなあ。知らない世界が見てみたい。
というか、「ビジネス対象」がメインになってしまうと、島シリーズは面白くない。
ワインビジネス時代もいまいちだったように。
ま、前作の取締役時代=上海の董事長の実績を認められて
本社に戻って業務執行役員になった流れから、仕方ないんだろうけど。
そこはリアリティにヘンにこだわらずに、変化を与えてほしい。
ところで、島シリーズの最大の発明は、リアルタイム成長(出世)手法なんだけど
技法としては、「四角い枠取り」が素晴らしい発明だと思っている。(下の写真)
普通の漫画であれば、自分の「思い・考え」の部分は
ホワホワした縁取りの「ふきだし」だが、島シリーズでは「四角枠」だ。
「四角枠」は自問自答系だけではなく、ちょっとした心のつぶやきや
島による説明のナレーションなんかにも使えて重宝する。
台詞にも使えるし、ちょっとした文章にもなる、都合のよい技法だ。
これはホワホワふきだしではできない。
読者は、ふきだしとは違う、四角枠を読むことによって
島耕作の心とシンクロしたり、より考えを深めるのである。
この四角枠の発明があったから、島シリーズは成功したと思うんだけど、なぜか
(作者はわかっているだろうに)、現在の「常務島耕作」ではうまく使われていない。
しかも、他の登場人物までが、この「四角枠」を使ってしまっている。
「四角枠」=「読者につぶやく島の独り言」というせっかくの手法がもったいない。
弘兼さんが知り合いだったら、すぐにでも電話して問い合わせたい。
しかし、最初の「課長島耕作」から読んでいるけど、島、ずいぶん出世したなあ。
このまま「社長島耕作」になるのだろう。それは面白くなりそうだ。
そう考えると、現在の「常務島耕作」は、ドラマとして中途半端なのかもしれない。
業務執行の権限がうまくドラマに結びつかないのだろう。
せっかく本社に戻ったのに、やっているのは対中だし。(まだ言ってる)
そう思うと、早く「社長島耕作」になってほしいものだ。
そして、漫画世代が年寄りになった頃
「会長島耕作」「相談役島耕作」と進んでいけば
シルバー世代をマーケットとした、狙いばっちりの漫画になるね。