「Q」に行く。
「Q」は前にも書いた、恵比寿の次世代立ち飲み屋だ。
生ビールを頼むなり
いきなり「blogに書いていただいて…」とスタッフの先制攻撃。
飲む前から「およよ…」と、クラっとよろける。
このblogを見て知ったとカミングアウトをした人もいるようで
確かに、管理系のツールで「どんなキーワードでこのblogに来たか?」
のデータを見てみると(今見てる)、「恵比寿 Q 立ち飲み」というキーワードで
Yahoo!からの検索で来る人が、1日数件いるんだね。ふぅむ。blogってすごいなあ。
(といっても、Yahoo!で13番目なんだけどね。
なもんで、協力体制ということで、今回エントリーのタイトルを
「恵比寿 立ち飲み Q」としました。SEO対策てやつですな)
Qはこのところ大人気で、いつもはめちゃ混雑しているのだが
行く時間が遅かったので、スタッフといろいろ盛り上がった。
いやぁ、あそこのスタッフ、サイコーだわ。
いろんな話で盛り上がったのだが
昔、恵比寿にあった「由紀子」という屋台の話。
もう、懐かしくて、懐かしくて。
由紀子というのは、恵比寿東口名物の屋台だったんだけど
屋台っていっても、くじらのステーキとか、めちゃ凝った作りのカレーとか
おでん以外のメニューが豊富だった。
もちろん、メニューよりも、何よりも、そこのママというか店長の
「おゆきさん」の人柄に惹かれ、みんな朝まで飲んでいた。
ある時期は、3日に2回くらい行っていた。
あの屋台で、いろんなこと教えてもらった。
最もよく行ってたのは、20代の前半の頃だったので
屋台という仕事、営業を通して、「大人」を学んだ。
屋台営業なんで、まぁやっかいなこと起こるんですよ。
そういうときいつも、「この状況、どうもっていくんだろう?」と
「クイズ、こんなとき、あなたならどうする?」みたいな感じで
大人を勉強させてもらっていた。
エピソードはいっぱいありすぎるんだけど、1つ書きます。
2時か3時頃、めちゃくちゃガラの悪いチンピラが来たことがあって
屋台全体が悪い雰囲気になって、またそれを楽しんでいる様子もあって
「さぁ、これ由紀子さん、どう対応するのかしら?」と
ワクワク応対を楽しみつつ、待っていた。
チンピラはいろいろ注文したのち、名物の「コロッケ」を追加でオーダー。
由紀子さんはオーダーを受け、コロッケを油の入った鍋に入れる。
そのコロッケ投入をきっかけに、チンピラがケチを付けた。
「おう、ババァ! その油、熱くしすぎなんじゃねえか?
そんな熱い油にいきなりドボンじゃねぇだろ、コロッケは」
その前の会話でわかっていたのだが
どうやら、そのチンピラは前にメシ屋で働いたことがあったらしく
コロッケの前にも、ちょこちょこと由紀子さんの調理にケチを付けていた。
こっちはもうドキドキで、映画館で予告編がやっと終わって
ドルビーとTHXのロゴが出て、「さぁ本編始まるぞー!」
みたいな感じだったんだけど、由紀子さんは完全無視。
「おい、てめぇ、無視してんじゃねぇよ!
油、熱くなりすぎだろぉ、コラ!」
チンピラは無視されて怒り、さらに文句を続ける。
すると、由紀子さんは無言のまま
なんと! 油の鍋の中に自らの「手」を、指の第二関節くらいまで突っ込んだ!
チンピラ含め、全員が「何すんねん?」とドン引きでビビると
油の付いた手を引っこ抜き、指をスナップさせて、チンピラに油をかける。
「ぜんぜん熱くないねぇ、ホラ!」
と笑顔で、油ピシピシ攻撃を続ける由紀子さん。
油が顔面にピピピとかかったチンピラが、予想外の攻撃に慌て
「な…な、なにすんじゃコラ!」とちょい弱めに吠えると
それまでジッと静かに飲んでいた、長椅子の端に座っていたおっさんが立ち上がり
チンピラの背後に近づき、チンピラの右腕をつかんで
「じゃあ、テメエが手ぇ、突っ込めや」(今思うと、無茶苦茶だなあ)
その人、チンピラどころか、ヤクザの大トロみたいな人だったことが判明。
こっちは心臓がもう、ドルビーサラウンド。
油面のチンピラは、当然のように静かにいなくなった。
「いやぁ、こういう展開かぁ。こういう対応なのね、ハァ…」と
あまりにもおかしくて、クククと笑い出すと
「この状況で、あんたもよく笑ってんねぇ。ビール飲む?」
と、そんな屋台でした。
(もちろん、そんなのは「たまに」なんだけどね)
大人にさせてもらったなあ。
実際、いい大人になった。
もう年末だ。今年ももう終わりだもんなあ。
なんてエピソードを思い出し、「Q」を後にする。
朝の5時前。
どうやら今年最後の客だったようだ。
年始は6日からだそうで。
みなさん、「Q」に行ってみてください。
ぜひ。
え?
「由紀子は?」って?
もう「由紀子」はないんだよね。
彼女が交通事故で亡くなったのも、こんな寒い、冬の日だったなあ。