第三十七回【家出と】さすらいの体脱さんの巻【インドと】
- 真名 :
家のカルマの話はスペースマッチョが言っているとおりですね。ミッシェルがさっき紹介しましたが
「家族や家系。それら相寄る魂が編み込まれる際に、摩擦が生まれていくと、それが蓄積していずれはどこかで解放が必要となっていく。
そのために生まれてきた子供がその摩擦の蓄積した情報を持ってこの世界にやってくることがあり。それを解放するための行動を行い解放した後に肉体を失う、というパターンもある。
これらはいわゆる『家系のカルマ的なものとも言える』」。
この部分です。
これとなにか関係が?- ミッシェル:
お父様は体脱さんの父親の家系筋を引いているお方です。そのお父様がこのタイミングでお亡くなりになったということは、物理的にも家系の継続を体脱さんが今後担っていくということになるのですよね。
- 体脱 :
はい、その通りです。この、世界線を超えるか超えないかの手術のタイミングで、父親が逝去したということは、長男である僕にその引き継ぎの役目が回ってきたということなのです。ただし・・・
- はるん :
ただしってなんですか、体脱さん?
- 体脱 :
その家系というか、代々引き続いているであろう家系の「業(カルマ)」のようなもの。家庭の雰囲気ですとか環境にそれは自然に現れてくるものだと思うんですが、その家の子どもとなると、それが生まれてから成長するにつけ身についていきますよね。
子どもの頃は特になにも感じること無く過ごしていたのですが、ものごころ付くに連れなんというか、その「業」のようなものがとても気になって、例えばものの見方とかその解釈の仕方とか、ま、親に反抗する思春期というのもあるんでしょうが、18歳になった時に僕はそれが嫌でしかたなくなり、家出してしまったんですね。
「このままではオレはだめになる」って両親に宣言して。- はるん :
ははぁ、それってよくある青年期を迎えた男の子の「はしか」みたいなもんでしょ? ┐( ̄ヘ ̄)┌
一時的なものだし、そんなの女子にもありますよ。もう、「我慢がきかないワガママな娘ねっ」て、よくお母さんに怒られました。
でもね、本人にとってはなんかとても複雑な感情があるんですよね。一口では表現できない。- 体脱 :
具体的にはよく言えないんだけど、その頃の自分を取り巻く家庭環境の全てにとても耐えられなくなったんだよね。
- ミッシェル:
お父様は会社勤めをなさっていらっしゃいましたか?
- 体脱 :
いいえ、詳細は述べませんが自営業です。両親ともに働いていて、僕が高校生の頃、自宅を購入していましたが、決して裕福ではなく働き詰めの両親でした。それ自体は構わないのですが、僕には父方のしょっている因縁とまではいいませんが、「業」のようなものがとても強く感じられ、それを嫌悪しはじめたんです。
- ミッシェル:
つまりそのままその「業」を受け継ぐことに対して、激しい抵抗感があったと?
- 体脱 :
はい、よくロックミュージシャンとか、若いころ社会や生活環境に対して反発し反抗的な世界観を持つじゃないですか? 僕の場合は学校というものにも大きな疑問を感じてはいたのですが、主に家庭環境、特にその、目に見えることではないが、その「精神的な環境」に対してアレルギーのようなものが起こったんだと思います。
- はるん :
体脱さんってそれ以前から幽体離脱はしてたんでしょ?
- 体脱 :
それは小学校4年ぐらいからね。
- ミッシェル:
「精神的な環境」というのは少なからず思春期に社会からドロップアウトしようという若者たちに影響を与えているものですね。しかし、主たる要因がそのような眼に見えない事柄であると自分で感じながら逸脱する若者はそんなに多くないでしょう。
例えば自分がもっと見立ちたい、異性に注目されたい、ひとの上に立ちたい、金儲けをしたい、など、周りにもわかりやすい形でその反抗心は出てくるのが常ですよね。
もちろんまだ若い人たちなので、その他の要因もまぜこぜになってドロップアウトしていく、というものでしょうが。
そしてその後、体脱さんはインドに行くのですか?- 体脱 :
はい。家を出てアルバイトしながらバンドでベースを引きつつ、バイトで貯めたお金でインドに向かったんです。
周りのミュージシャン連中でもその時期にニューヨークに行ったりロンドンに行ったりした仲間たちは多いのですが、僕の場合は音楽やってるのになぜかインドで、1977年の春、その頃仲の良かった友だちはニューヨークへ、僕はインドへ同時に旅だったんですが、行き先をその友だちに告げた時「オレはニューヨークだけど江口はインドか。お前らしいなー」って言われたのはよく覚えています。
22歳になったばかりの頃ですね。- はるん :
「お前らしいなー」、って、実際なんでインドだったんですかぁ? まさか体脱さん、ターバン巻いてベース弾いてたんじゃないでしょうねっ! @:-)
- 体脱 :
コミックバンドだったらやってただろうけど、その頃はニューロックといって即興演奏を中心としたストイックな音楽やってたから、それはないな〜(笑)
その頃の心境はね、ともかく
「自分自身がメチャクチャになってもいいから、生まれ変わりたい」
というものだったんです。いまでもそれははっきり覚えてます。
音楽は大好きだったんですがプレイヤーとしても「このままでいいのだろうか?」という疑問に答えられない自分がいたし。- はるん :
なんかもう、体脱さんの半生記みたいになってきたじゃないですかぁ いいのかなぁ。でもいまもそうですけど、その頃のインドってメッチャ宗教的な国なんじゃないですか? 仏教の発祥地だし、イスラム教や、地元の大部分を占めるヒンドゥー教、ターバンのシーク教とか、いろんな宗教が入り乱れている。
- 体脱 :
そうなんだよ、地面を歩いているアリや蚊も殺さないジャイナ教徒とか、町中には、腰に布だけ巻いて、裸で持っている杖だけが財産の修行者の老人や、それを取り巻く乞食のような不可触賎民、ハンセン病で顔や指が溶けたような道行く人の同情心を乞うために、すぐに手足を折られて地べたを這いまわりながら物乞いする子どもたちなどが、混在していて、地獄のような現実が目の当たりにあった。
特定の宗教を凌駕するインド古来からの、社会においての地位が家系や血統を再優先となって決められている身分制度、カースト制度によって縛られた民衆が、そのような生活の中で暮らしている世界を見たんだ。- ミッシェル:
精神的な理由から家庭を離れ、日本という国の中だけで音楽活動を始めた青年には、その当時同時に存在するそのような他国の現実は、さも衝撃的だったでしょうね。
特にその「家系によって今生のあり方が決定されるカースト制度」のありさまを直接目に出来たというのは、体脱さんの家出の現任となった、「家系の『業』から抜け出すための自立」という部分についての意味合いと、象徴的にリンクしますね。そのためにインドから呼ばれたということも出来る。
ここは大いに関係しているところのように思えてしまいます。- 体脱 :
一般的には、「インドという国では、生まれた家庭の職業から子孫は決して逃れることはできない」、という理解をされていますが、これは単に象徴的な意味合いとして伝わっているだけで、実はその家系の業とか、その人の宿命をも含むもっと深い意味があるのかもしれないと、いま思えてきている・・・
- はるん :
あれぇ。ここでもまた・・・なんだか、体脱さんの半生記も思わせぶりな意味持って聞こえてきちゃうじゃないですかぁ〜 んもぅ、こんなんでいいんかなぁ? この連載ー。
<7月4日(月)に続く>