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April 30, 2009


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「素晴らしい終わり」

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昨晩は、坂本さんのピアノツアー千秋楽。
昭和女子大人見記念講堂へ。
長男と。


最終日を感じさせる、素晴らしいコンサートだった。

後で書くけれど、あの「事件」がそれを物語っていた。

「素晴らしい終わり」だった。


こういうのは個人差あるだろうけど
僕は会場の、昭和人見の音というか空気がすごく好きで
それが理由で、追加公演は、オペラシティではなくこちらのチケットを取った。
追加公演は、あっという間に売り切れたようで、運がよく買えてよかった。

もちろん、オペラシティの音も素晴らしいけどね。
良い悪いでいったら、当然、オペラシティなんだろうけど
じゃ、どっち、と言われたら、単純に好みの問題で昭和人見にした。


「息子と坂本さんのピアノコンサートに行く日が来たかあ」
と、なかなかに感慨深い心境で、開演を待つ。
大きくなったものだ。もう11歳か。


演奏はどれも素晴らしかった。

行ってもないのに勝手に想像で書くけど
ある意味、「最終日」は、1日前のオペラシティだったのではないかと思う。
映像の収録もあったわけだし。
東京へ凱旋、的な感じもあっただろうし。

だから、昨晩の昭和人見のコンサートは
追加公演の追加公演、みたいな気分だったのではないだろうか。
坂本さんのMCや、ピアノ演奏、演奏中の坂本さんの身体の動き
演奏曲目や曲順を見て、そう感じた。
なんというか、打ち上げ演奏、っていうわけでもないけれど。
うまく説明するのが難しいな。

いずれにせよ、「これで最後だー!」という感じが最初から出ていたコンサートだった。

でも、たしかに、約1ヶ月半の長いツアー。
全24公演もやったわけだから、そういう気分になるでしょう。


個人的には、2曲目の響きや余韻を大切にしたインプロがよかった。
High Heelsが、かなりぐっときた。
kokoは嬉しかったなあ。Last Emperorが素晴らしかった。
カチっと弾いたMerry Christmas Mr. Lawrenceを生で聴くのは、何年ぶりだろう。


アンコールも2回が終わり
客電もついて、アナウンスも終わり、テロップも終わる。

しかし、客席の拍手は、鳴りやまない。


最終日の最後、もう終わってしまう、という理由が大きいだろうけれど
2回目のアンコールの最後のParolibreの演奏が素晴らしかった
というのも、客席の終わらない拍手を生んだと僕は思っている。

恥ずかしげもなく言うが、実は僕、Parolibreで泣いてしまった。
しかも、気付いたら、あれ涙が・・・という珍しい現象。
なんで泣いているのか、泣いたのか、いまでもよくわからない。
とにかく心が打たれたようだ。


ずっと続く会場の拍手。

鳴り響く、止まらない拍手。

さすがに......と、帰っていくお客さんもいる。


しばらくすると、ステージ横から顔を出す坂本さん。
(ここからiTunesでも聞けます)
しょうがないなあ、だけど嬉しいなあ、という表情でピアノへ向かっていき
3回目のアンコールに入ろうとする。


うん。素晴らしい。

アンコールというものは、こうでなければ。


拍手がいっそう大きくなり、歓声や指笛が鳴り響く中、坂本さんはピアノへ。

「え〜、お帰りになってくださらないので......、仕方がなく......ハハハ」


僕は、ここで、ライブを見た。ライブを感じた。


ツアーの最後の最後、ここにきてやっと、坂本さんのライブが始まった
とも言えるような空気だったのではないだろうか。
その場にいられて、幸せだった。


3回目のアンコール。

曲が始まる......


......が、なんと曲の頭で早速ミスタッチ。


演奏が止まる。


いままで、なんども坂本さんのコンサートを見ているが
ここまでのミスは見たことがない。
いや、ミスタッチではなく、完全にメロの指の運びを間違えてしまった。


鳴りやまない拍手で、3回目のアンコールにやってきて
さらに大きな拍手で迎えられ、照れながらピアノに向かい
あーこれがほんとに最後の最後だ、という心境、状況が
aquaという、坂本さんの曲の中でも、かなりシンプルで、スピードも遅く
今回のツアーでも半数近くの会場で弾かれた、慣れに慣れた楽曲での
しかも曲頭のメロディ間違い、なんていう


「奇跡のような素晴らしい」瞬間を生んだ。


演奏を止め、苦笑いする坂本さんに応える会場。

拍手と笑い。


すると坂本さんは、照れ隠しなのか、空気を改めたいのか
即興でジャジーな、早い動きのピアノ演奏を始める。


盛り上がる会場。

ライブだ。


ほんとに、最後の最後、その最後で、坂本龍一のライブ、その空間が生まれた。


即興のプレイが終わると、まったく間をおかずに
再度、ゆっくりと楽曲、aquaが始まる。

まるで、大暴れした後、突然、座禅を組むように。


いつもよりも、ゆったりしたaquaの演奏。

そして、曲が終わる。


深々と礼をして、手を振り、ステージから坂本さんは去っていく。


しかし、もう、誰も、さらなるアンコールは求めない。

もう、坂本さんを呼び込む、拍手が鳴り続くことはない。

なぜなら、そこにいた全員が、「終演」を感じたからだ。


素晴らしいコンサートだった。

素晴らしいコンサートツアーの「終わり」だった。


こんな「素晴らしい終わり」なんて、誰も想像しなかっただろう。


坂本さん、長いツアー、ご苦労さま。

「素晴らしい終わり」に頭がクラクラしたまま、楽屋に息子を紹介しに行った。


僕の息子と、坂本さんが、握手をしている姿というのは、奇妙なものだった。


息子よ。

この坂本さんという人は
パパがお前くらいの頃からずっと大好きな人なんだけど
今日、改めて、もっと好きになったんだ。


Posted by eno at April 30, 2009 06:58 PM


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