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October 30, 2008


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ライバル

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「……わ、わかったから!」と思った。

いくらなんでもしつこいのではないだろうか。

5人に言われたくない。


……いや違う。


右から順に紹介する。

松本(赤い棒を持って制服を着た人)

吉田(方向を指し示すこと、この道15年)

新山(ミスが多いが、働き者)

富岡(親の代からの古株。気は優しい)

矢巻(仕事のしすぎで矢印だけになってしまった)


全員が、さすがに全員は必要ではないと思っているが、言い出せない。
とはいえ、自分から降りるわけにはいかない。
生活とプライドがかかっているのだ。


誰が最初に「去る者」になるか、と全員が感じている。
と同時に、自分の身を心配している。


「必要なし」と思われたら、「負け」となってしまうため
全員、早朝から、現場にやってくる。始発に乗って。

たまたまの偶然で、ほぼ全員が、京浜東北線沿線住まい。
それも、互いのライバル意識を、高めていた。


今日も、早朝から、全員が集まった。
なにもない、静かな路地に。
なにもない、昨日と同じ日が、ただ過ぎていくと思われた……


……が、突然、ひずみが生じる。


松本(一番右)が、つい「疲れたなあ」と呟いてしまったのだ。


プロとしてあるまじき発言。


松本も、すぐに「しまった!」と思ったが、遅かった……。


……去る者が決まった。松本だ……。


吉田が無言で「まわり道」を案内する。
「ここから去れ」という厳しい態度をとる。

すると富岡も「最徐行」と、松本に伝えた。
「ゆっくり行け」と優しいが、「去れ」という真意には変わりない。

新山も慌てて意思表示をしたが、「車両通行止」と間違ってしまった。
が、結果、「車両扱い」という皮肉になった。

そして、矢巻はただ、静かに、矢印を外に向けた。


それが、この写真。松本はただ、佇む。

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やがて、ライバルであり、仲間が、1人、去ることになった。
悲しいことであるが、それは彼らの世界の出来事である。

僕らに、投げかけることのできる、言葉なんて、ない。


Posted by eno at October 30, 2008 01:42 AM


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